1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
ある晴れた日の午後、私は知り合いの博士に用事があって、彼の家を訪れた。
「いや。吉田君、久し振りだね。どうだい?研究は進んでいるかい?」
「はい。おかげさまで、そういう博士の方はどうですか?」
私と博士は分野は違うが同じ科学者としての研究仲間でもあった。時々、私か博士、どちらかが相手の家を訪ねてきた時は互いの研究成果を見せ合う時が多く、その日も博士は私に新しく造ったモノを見せてくれた。
「試作ではあるが、いいのができたよ」
博士はそう言って、口笛を吹いてみせた。すると、僅かに隙間が空いていたドアから、ズルズルと這い出てくる細長いモノが見えた。
「これが、博士の新しい発明品ですか!」
私は思わず、それに駆け寄った。
それは、ヘビであった。舌をペロペロと出して動く様はちょっとした不気味さがある。何も知らない女性がいきなり、これを見せられたら、悲鳴を上げて気絶してしまうかもしれない。
しかし、私はそれが本物のヘビではないことを知っていた。
「どうやら、正常に作動しているようですね」
「ああ。災害時に活躍するレスキュー用ロボットだ」
「なるほど、ヘビの形状なら瓦礫の隙間にでも入ることができますよね。この両目がカメラになっているのですから。これが、普及したらきっとより、多くの人命が救えることでしょう」
「いやいや。吉田君。ただ、人を捜すだけのロボットだったら幾らでもある。私は、更にそれを一歩前進させたのを造った」
「と言いますと?」
博士に質問をすると、彼は嬉しそうな顔をして、ロボットヘビの口を開いて見せた。ロボットヘビの口は、忠実にヘビを再現していた。鋭い牙があり、油断していると噛まれてしまいそうだ。
いくら作り物だと分かっていても、牙を見せられるとさすがの私もドキリとして身を引いてしまう。
「安心したまえ。噛まれたところで死ぬことはない。むしろ、元気になる」
「どういうことですか?」
最初のコメントを投稿しよう!