ヘビ

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「ヘビの口を参考にして、私は効率よく人体に薬を打つ方法を編み出したのだ。ヘビの舌で相手の体温や脈拍を計り、さらにカメラには写らない箇所にある傷口を見つける働きがある。そして、舌が読み取った情報を元にロボットヘビの胴体に搭載されてある、薬や栄養剤を注射するようにしたのだ。牙に見えるのは注射針だ」 「なるほど、ただ見つけるだけではなく即席の注射器にもなるというのですか」 「その通り。敗血症など危険な状態に陥った時は、このヘビが大活躍するんだ。注射したあとの針は即座に内部に回収され新品の針に交換される。止血も同時に行うので、衛生面での問題もない。もっとも、刺された時の痛みだけは解消できないがな」 「緊急事態ですし、それぐらいは我慢していただかないと」  私と博士は互いにジョークを飛ばし合い笑った。博士の最新作であるロボットヘビは良い物であるに違いない。きっと、救助の仕様を大きく塗り替えるロボットになることだろう。  私と博士はロボットヘビを側に置いて、彼が注いでくれたお茶を飲みながら互いの成果を語り合った。 「ところで、吉田君。君の研究の方はどうかね」 「なんとか、目星はつきました。ただ、まだまだ、未完成でして」  博士の素晴らしいロボットヘビを見せられた手前、まだまだ未完成の段階である研究の成果を見せるのは、少し恥ずかしかった。だが、博士の成果ばかり見せてもらうのも悪い。私は私なりの成果を披露してみせた。 「これになります」  私は鞄の中からリモコンを取りだすと、ボタンを押して見せた。すると、空間が歪み始めた。といっても、大きな歪みではない。野球ボールが入るぐらいの大きさの穴しかない小さな歪みだ。 「これが、吉田君が研究中の四次元空間にモノを収納する技術の試作か」 「はい。昔から、様々な分野で異次元にモノを保管しておく研究はなされていました。私も、独自に研究を続けていますが、今はこれが限界です」
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