ヘビ

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 博士の研究と同じように私も、自分の研究には自信はあった。この技術が実用できるまでに確立した時、人類は保管場所という空間的収納の苦痛から解放されるのだ。可能性はいくらだってある。個人はもちろんのこと、放射性物質や危険物など普通では置いておけないといった危険なモノをしまっておけるようになる。  博士は興味深そうに小さな穴のように歪んでいる空間に触れてみようと手を伸ばそうとした。それに気付いた私は慌てて、博士を制止する。 「やめてください。空間はまだ不安定です。下手に手を入れて、もしケガでもしたら・・・」 「大丈夫だ。その時は、このロボットに治療させるから」  博士は冗談交じりでロボットヘビを指差し言う。博士のジョークに私は少し笑ってしまう。 「ですが、異次元や四次元はまだまだ、研究途中の空間です。安易に手を出すことはお勧めできません」 「分かってる。私も手を失うのは嫌だからな」  博士がそう言った時だった。ロボットヘビが急に動き出したのは。 「お、おい!」  突然、動き出したロボットヘビを博士が止めようとした。もちろん、私も一緒になって捕まえようとした。二人がかりであったが、ロボットヘビは素早い身のこなしで、私達の手を逃れると、よりにもよって、私が生み出した空間の歪みへと飛び込んでしまった。 「なんということだ」 「申し訳ありません」  これは、私にも予想できなかった。まさか、ロボットヘビが自ら空間の歪みに飛び込むなど、想定外の事態であった。それは、博士も同じだ。突然、動き出してこのような行動に出るなど、想像もしていなかった。  せっかく、博士が造った優秀なロボットヘビは歪みに入ったきり出てくることはなかった。試作とはいえ、悪いことをしてしまった。 「いやいや。いいんだ。だれは、試作の一つだ。設計図も残されている。また造ればいいだけのことだ」  博士はそう言ってくれたが、私は責任を感じずにはいられなかった。ここにも、少し居づらくなってしまった。私は用事を思い出したと、嘘をついて博士の家を出ていった。  今度、博士の家を訪れる時はお菓子でも買って、お詫びしなければ。
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