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1-1.はじまり
淡い色の美しいサクラの花びらが一つ
ヒラヒラと舞い降りて
四角い顔の男の脂っぽい額にピタリとくっついた。
四角い顔の男は張り上げるような声で言う。
「どこの馬の骨ともわからん奴を通すわけにはいかん!」
そう言われた俺はしぶしぶ荷物を抱え、その場から引き返す。
ここはとある大名屋敷の門前。
たった今文字通りの『門前払い』を受けたところだ。
これで門前払いを受けたのは六軒目。
ただ士官したくて来ただけなのに、士官の話どころか名前すら聞いてもらえない。
その上、馬の骨呼ばわりだ。
去り際にチラッと男の方を見ると、額にはまだサクラがくっついたままになっていた。
立派なお飾りだこと。
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