第一章 髪結い

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大名屋敷が立ち並ぶ武家地から、町へと続く桜並木の道を少し歩き「あーあ」とため息をついた。 綺麗なサクラがヒラヒラとめでたく頭の上に降って来る。 門前払いばかりで、何一つめでたいことなどないのに。 この辺りは国内でも一番大きいといわれる『リン』という町だ。 言わずと知れた将軍家の御膝元である。 これだけ大きな町であれば、奉公先もすぐに見つかると思っていたが、その考えは甘かったようだ。 そのまま並木道を下って町の方まで下りてきた。 坂の上から見ると、町の規模がいかに大きいかよくわかる。 辺り一面に広がる無数の家屋。 何となく窮屈そうに見える。
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