第一章 髪結い

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少し休もう。 腰に差した刀を置き、目の前にあった石段の上に腰を下ろす。 俺の名は原田龍志郎。(りゅうしろう) 歳は今年で二十一になる浪人だ。 玉響一刀流(たまゆらいっとうりゅう)の使い手である。 誰も知らないような無名の流派だ。 ひい爺さんの代で御家が取り潰しになってから、爺さんも父上もどこにも士官できず、浪人として人生を歩んだ。 俺の代こそはと思い、士官できるところを探しているのだが、やはりそう簡単にはいかないようだ。 この『サライ』という国は、右へ行っても左へ行っても『家柄』がないとお城では奉公させてもらえないらしい。 将軍家で奉公したいなどと贅沢は言わない。 名のある武家であればどこでも構わないのだ。 今行ってきたナントカ家のような無名の武家でさえも門前払いとは。 世知辛いにもほどがある。
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