第二章 町方同心

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前に髪切り魔事件の現場になった大ナガラ川沿いに、大きな湯屋が一つある。 俺たち三人はそこへと足を伸ばした。 湯屋に着くと、まだ昼過ぎだったせいか全然お客が入っていなかった。 子供は珍しそうに辺りをキョロキョロしている。 洗い場で子供にお湯をかけてやると、驚いて声を上げた。 「わっ」 子供は肩をすくめる。 温かいからビックリしたようだ。 きっと今までは川で洗ったりしていたのだろう。 家から持って来た米ぬかで、子供の体と髪を綺麗にこすってやった。 随分と汚れている。 米ぬかは、肌が綺麗になると言われているのだ。 お湯を流すたびに黒い水がどんどん流れてゆく。 きっと他のお客がいたら文句を言われていただろうな。
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