第二章 町方同心

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平八は恐る恐る役人に聞く。 「あの……近江殿といえば、ひょっとして『町方の閻魔』の異名を持つ?」 マチカタノエンマ?? 何だそれは。 近江という役人は、大きなおなかをポンポンと叩いて 「ほう、お主わしのことを知っておるのか!!ワッハッハ!!」 高らかに笑った。 平八の話によるとこの同心は、閻魔として恐れられている有名な同心らしい。 嘘や言い訳が一切通用しない厳しいお役人だそうだ。 「嘘ついたら舌を引っこ抜かれるでやんす」 平八は青い顔で言う。 近江という同心は大きな声で笑った。 「ワッハッハ!そんな噂が出回っているのか!嘘つきは泥棒のはじまりだからな!!泥棒には特に厳しいぞ!!」 至近距離なのに更に声を張る。
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