第二章 町方同心

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俺は気にせず奥に進む。 近江殿が大きい声で 「これを見てくれぬか!!」 そう言って『ござ』の上に置いてある白い塊を指さした。 俺は近くまで行ってそれをよく観察した。 !! 「これは……!」 俺が見た白いもの…それは、まぎれもなく人の死体だった。 その姿はまるで、カイコのさなぎのように、細い糸でグルグル巻きにされた男の死体だ。 歳は四十前後だろうか、短髪で頬が痩せこけた男で、肩から膝あたりまでが白い糸で巻かれている。 首元や脚などに、何かに噛みつかれたような跡があり、その部分が無くなっている。 まるで虫に食われた葉っぱのようだ。 無残な死体としか言いようがない。 あまりの酷さに吐き気が込み上げてくる。
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