第二章 町方同心

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顔を上げると近江殿が困った顔で俺を見ていた。 「俺にもわからん」 とりあえず正直な意見を答えておいた。 「むむう……先生にもわからんときたら、やはり物の怪の仕業ではないのか」 近江殿は難しい顔で呟く。 どうやら先生とは、やはり俺のことだったようだ。 近江殿の話によると、この謎の変死体が、ここのところ続けて発見されているらしい。 これで三件目だという。 近江殿は普段、窃盗や強盗などの事件を担当しているので、殺人や変死の事件には、あまり詳しくはないと話している。 先日の髪切り魔事件で、変死や殺人事件を担当していた同心が亡くなったため、急きょ近江殿が担当しているそうだ。 ひょっとして 俺が斬ったあの男のことだろうか。 微妙に責任を感じる。
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