第二章 町方同心

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長屋に戻った俺は、近江殿が持って来た事件簿に目を通した。 これは奉行所の役人が事件に関しての調査をまとめたものだ。 『糸巻き殺人事件』 変な事件名が付けられている。 最初の被害者は、出会い茶屋で発見されたようだ。 出会い茶屋とは、恋仲である男女が逢引きする茶屋のことだ。 状況が細かく図で解説されている。 三十五歳の男と、二十二歳の女が糸でグルグル巻きにされて、何か所か食われて亡くなっていたようだ。 部屋の中にはところどころコゲ跡があったようだな。 畳の上に数か所小さなコゲ跡ありと記録されている。 火事には至らなかったみたいだが、何のコゲ跡だろうか。 最初に見つけたのは、この茶屋の女中か。 客がいつまでも帰らないから様子を見に行ったのであろう。
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