第1章

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馬主たちが、サラブレッドの馬を品定めするように、 顔はきれいか? 服のセンスはあるのか? 男性経験は豊富なのか? スタイルの細かいところにいたるまで彼女たちは品定めし、 その女子の値段を頭のなかではじき出す。 そして、自分より可愛く、敵わない相手だなと思えば下手に出て自分の仲間に入れようとする。 グループにキレイな女の子がいることはプラスに働くし、 キレイな女の子の隣にいると、 自分の価値が上がることを知っているからだ。 一方で、自分よりも見劣り、 自分よりも人生が楽しそうじゃないような女の子には、見向きもしない。 何か嫌なことがあったときに、 その子を見て、あの子に比べればましか、と思うくらいである。 仮に友達になったとしても、自分の方が上だよということを、 間接的に言葉に混ぜ、ちゃんとマウンティングしている。 そう、女子は複雑。 そして、私。 前島岬も複雑な女子の一人だった。 私が転校生に対して期待していたこと。 それは・・・ 私よりもいじめられる子が来てほしい ということだった。 そんなクラスの騒ぎは、担任の棚橋が来て静まる。 体育教師特有のジャージを着て、 ボサボサの髪をボリボリ掻きながら、棚橋は挨拶し、 『はーい。今日から転校してくる女の子がいるので紹介しまーす』 と寝起きのガラガラの声で言うと、 よせばいいのに、ユーモアのつもりかつまらないギャグを棚橋は言った。 『決して、先生の彼女ではない  ぞー。なんつってな、がははは』 と笑う棚橋にクラス中から 『朝からつまらねえギャグいってんじゃねえ!』 『だいたいお前彼女いたことあんのかよ!』 『学校から去れ!鬼畜が!』 と怒号が飛ぶ。 棚橋はあわてて場を納め、 『はい!紹介するぞ~!小金沢さん、どうぞ』 棚橋が教室のドアを開けると、 生徒たちは一斉に入り口を見る。 静寂。 どんな女の子が来るかによって、 このクラスの雰囲気が変わるであろう。その重要人物が入ってくる。 まるでスペースシャトルの打ち上げを見守るかのような、熱気と、緊張が、クラスを包んだ。
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