第11章-密接不可分-

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「おい、お前ら……」 「隊長はあの梨さんに関してはどうお考えですか?」 「……は?」 岸田からの追撃を逃れるべく、内海は介入してきた垣崎を盾にせんと強引に話を振った。 「……梨のくせにあの無駄に高い機動力で繰り出すヘドバンには正直言って悪寒を覚えるが、活動限界を迎えるまでの30分間を常にフルスロットルで駆け抜ける心意気は悪くない。以上だ。無駄口はここまでにしてさっさと監視を再開しろ。」 面倒くさい表情を浮かべておきながらもガッツリ自身の率直な感想を述べる垣崎。 隊員達から静かな笑いが起こる中で一方的に会話を断ち切る。そろそろ奴を始末しておかなければと改めて狙撃班へ指示を送ることにする。 「狙撃班、捉えている目標への射撃を許可する。」 『━━━━』 「……繰り返す、狙撃班。目標へ射撃してよし。」 『━━━━』 「……隊長、どうしました?」 どこか和やかな雰囲気が流れたのも束の間、一切反応が返ってこないことに怪訝な表情を浮かべる隊員達。 「……どうした狙撃班、応答しろ。」 『━━来る。』 「……なに……?」 やっと返って来たその声からは、先程まで落ち着きが感じられない。 ━━……まさか…… 『1200m先……数はおよそ20……いや30……それ以上か……真っ直ぐこちらに向かってくる……!』 「っ!総員射撃用意!」 刹那、放たれた号令に全員が銃口を上げ道路へ向けた。 「全員落ちつけ……こんな時こそ冷静になるんだ。」 針積めた空気の中、小刻みに震える周りの隊員達に、そして自分自身にも言い聞かせるように……垣崎は目前まで押し寄せている地獄からの使者の影をじっと睨み付けた。
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