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 つばの長いキャスケットを放ってよこす。タツオは野球帽をジョージに渡した。ふたりは帽子を目深(まぶか)にかぶると、錆(さ)びた鉄製の非常階段を足音を殺して駆(か)けおりた。    バイクを停めた電気街の路地裏にむかう途中だった。ジョージが目を伏(ふ)せていう。 「あれを見て」  タツオが軽く視線を流すと、進駐軍の装甲車が停止したところだった。後部のハッチが開き、見慣れた自動小銃をもった進駐官がわらわらと下りてくる。あのタイプの装甲車は乗車定員が運転手を含め9人だ。  消防車がくるのなら、まだ理解できる。火災警報が鳴っているのだから。だが、消防より先に火災現場に進駐軍が到着しているのは、なぜだろうか。身体(からだ)をこわばらせて歩きながら逃走現場を見つめていると、新たな装甲車が到着した。  潜りのネットカフェにつうじる道が完全武装した進駐官によって、封鎖された。規制線が張られる。
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