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柳瀬が目を細めた。保全部に夏休みの予定表は提出してあった。そこには東京に帰るとは書いていない。
「わかった。滞在予定は?」
「二泊三日で。できましたら……」
「なんだ?」
「できましたら、菱川浄児(ひしかわじょうじ)も連れていってやりたいのですが。菱川は東島(とうとう)の寮に戻ると、ひとりきりになります。あいつはいくところがないんです」
父親のアルンデル将軍は失踪(しっそう)し行方不明。日乃元(ひのもと)生まれの母はもう亡くなっていた。夏休みでがらんと空虚な寮の部屋に、ジョージをひとりで帰す訳にはいかなかった。
「いいだろう。東京での動静については、報告書をあげるように」
「ありがとうございます」
「いって、よろしい」
タツオは素早(すばや)い身のこなしの三拍子(さんびょうし)で180度回転し、柳瀬のスイートルームを退出した。
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