61

5/5
276人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 柳瀬が目を細めた。保全部に夏休みの予定表は提出してあった。そこには東京に帰るとは書いていない。 「わかった。滞在予定は?」 「二泊三日で。できましたら……」 「なんだ?」 「できましたら、菱川浄児(ひしかわじょうじ)も連れていってやりたいのですが。菱川は東島(とうとう)の寮に戻ると、ひとりきりになります。あいつはいくところがないんです」  父親のアルンデル将軍は失踪(しっそう)し行方不明。日乃元(ひのもと)生まれの母はもう亡くなっていた。夏休みでがらんと空虚な寮の部屋に、ジョージをひとりで帰す訳にはいかなかった。 「いいだろう。東京での動静については、報告書をあげるように」 「ありがとうございます」 「いって、よろしい」  タツオは素早(すばや)い身のこなしの三拍子(さんびょうし)で180度回転し、柳瀬のスイートルームを退出した。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!