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「ということで、ジョージはぼくといっしょに東京にいくことになったから」
夕食時のディナールームは満席の混雑だった。進駐官の服装にはTPOが求められる。夕食のたびに進駐官の礼服を着るのは面倒だが、タツオはきちんとした服装で食事をとるのは嫌いではなかった。さすがに東園寺家の山荘で、夕食はフルコースのディナーで、フレンチと和食から選ぶことができる。その晩の3組1班はフレンチだった。まだ未成年のタツオたちのテーブルには、赤ワインのように濃厚なグレープジュースのグラスが並んでいた。
「ぼくにはなにもきかなかったよね」
ジョージがすねているようだった。クニがいつもの調子で軽くいう。
「いいだろ、ひとりより楽しいし、タツオのところなら飯の心配もいらないし、なにより東京にはかわいい子が多い。おれもいきたいくらいだよ」
テルが全粒粉(ぜんりゅうふん)のパンに1センチほどバターをのせてかぶりついた。
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