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「おまえはいらないだろ。このバター、エウロペ製かな。とんでもなくうまいぞ」  ジョージが笑った。 「そうだよ。むこうの家を思いだすな。パンとバターとチーズは、エウロペのほうが断然おいしかった。だけど、タツオ、いきなりお邪魔(じゃま)して、お母さまには迷惑じゃないかな」  タツオもバターのせパンを試してみた。メインの子羊のローストよりうまいくらいだ。 「だいじょうぶ。料理の腕が鳴るって、喜んでいた。ただし、うちは没落したんだから、こんな豪華なところに泊まれるなんて思わないでくれ。びっくりするくらいボロい家なんだから」  静かな下町の一軒家だった。部屋の数は4つしかない。父が元気だったころは、一周するのに十五分はかかる池のある庭に、離れを含めて部屋数が20を超える豪邸に住んでいた。タツオには母の住まいは屈辱(くつじょく)だった。
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