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「あるものが近くの街のネットカフェで使用された」  情報保全部の柳瀬波光(やなせなみてる)がそういって、蛇(へび)のような目でじっと見つめてきた。タツオは両手を後ろで組み、胸をそらし立っている。 「あるものとはなんでしょうか」  タツオは探りをいれてみた。ここは興味を示すのが自然だろう。柳瀬は無駄なことは口にしない。 「きみが知る必要がないものだ」 「はい、失礼しました」  柳瀬は籐(とう)のソファから立ち上がり、開け放したバルコニーにむかった。眼下にはヤシの木と青いプールが見える。遠くの山の稜線(りょうせん)に夕日が沈んでいた。もうほかのメンバーの審問は終了している。柳瀬と会うのは、タツオが最後だった。情報保全部員が背中越しにいった。
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