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「僕は、夢をみるんです」
睡眠外来の診察室を訪れた男は、
担当医である私に、そう言った。
男は椅子に座ったまま、
生気のない目を、床に向けている。
「ほう、どんな夢を?」
「夢の中には色がなくて、
全てのものが、白と黒です。
ただいつも、その夢のどこかに
花が咲いています。
唯一、その花だけが
鮮やかな色を放っていて、
僕はそれが夢であることを知るんです」
男は不健康にやせ細っていて、
目の下に黒い隈を作っていた。
私はその男に興味を抱いた。
男に、というよりも、
男の話に、という方が正しいだろう。
その夢が、この男の睡眠障害に
どのように関わっているのか、
私は、それに興味があった。
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