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「つまり、君はいつも夢の中で、
自らの命を懸けたゲームを行い、
死を回避した直後に夢から覚める…と」
私は、注意深く尋ねた。
しかしその声が届いていないかのように
男は床に視線を落としたまま話し続けた。
「でも、困ったことが起きたんです。
昨夜の夢で、僕は地下室のような部屋で
椅子に座っていました。
椅子以外は何もない、コンクリートで
囲われた薄暗い部屋です。
白黒の世界で、僕はなぜか、
すぐにそれが夢だとわかりました。
でも、何かが違うんです…何かが。
そう、どこにも、
花が咲いていないんです。
周りを見回してみても、
色のついた花は、どこにも見えない」
そこまで話すと、男は初めて私を見た。
男の目は、まだ夢の最中のように、
瞳孔が開き、焦点が合っていなかった。
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