夢に咲く花

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「仮面の男が入ってきました。 男の手に、黒いリボルバー式の拳銃が 握られていました。 男はもう片方の手を、 上着のポケットに滑り込ませ、 取り出した弾薬を1発だけ装填し、 シリンダーを勢いよく回転させた後、 その拳銃を僕に差し出しました。 ロシアンルーレット…というやつです」 私は、身を乗り出していた。 いつの間にか、 男の話に引き込まれていた。 「拳銃はずっしりとした重みがあり、 僕はその銃口を自分の方へ向けました。 そして口に差し込み、咥えました。 呼吸が浅く、速くなるのがわかりました。 心臓が勢いよく動いて、 汗が噴き出しました。 僕は引き金を、ゆっくりと 指で押しました。 唸り声がひとりでに、 銃口を咥える口から発せられました。 その時です… 僕はふいに、目を覚ましたんです」 男は困惑した表情だった。 彼がなぜそのような顔をするのか、 私はまだ、理解できていなかった。
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