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「先生がさっき言ったとおり、
今までの夢ではいつも、
仮面の男から与えられたゲームを
僕がクリアし、そして、
死を免れた直後に目が覚めました。
しかし今回、僕はまだ、
拳銃の引き金を引いていません。
ロシアンルーレットは、
終わっていないんです。
いつも通りであれば、
僕がその引き金を引いて、
弾が発射されなかった後、
目が覚めたはずです。
でも今回だけは、
目を覚ますのが早かったんです。
そして今朝、
目覚めた時、
僕の手にはこれがありました」
そう言って男はポケットに手を入れた。
再び現れたその手には、
黒いリボルバー式の拳銃が握られていた。
「君、それは…」
私は座ったまま後ずさった。
男はさっきの話の続きのように、
その銃口を、自分に向けた。
「花が、咲いていなかったからだ。
僕は夢を終わらさなければならない」
男はそう呟いた後、
銃口を口に咥え、
引き金に指をかけた。
男の息遣いは荒く、
唸るような声を出している。
「やめろっ!」
と、私が叫ぶと同時に、
乾いた銃声が診察室に響いた。
男は床に倒れ込み、
打ち抜かれた頭から飛び散った血が、
白い壁を濡らしていた。
銃声を聞いて駆けつけた看護婦が、
甲高い悲鳴をあげた。
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