もう一つの証-2

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目頭が熱くなる中、私は残りのおかずを黙々と食べた。 時々鼻をすすると、その奥がツンと痛くて から揚げの味が よくわからなかった。 「…社長、私、先に行ってます」 15時からの外出し備えて準備が必要だった。 13時予定の来客の合間にしようと思っていたけれど、変更があったのでバタバタしそうだ。来客の前にしておこうと思い、渉さんに声を掛けた。 「ちょっと待て」 渉さんは最後の味噌汁を急いで飲んだ。 「社長はそんなに慌てなくても…」 「いや、一緒に行く。ちょっと用事を思い出した」 「…はい」 そして私たちは一緒に席を立った。 すると、渉さんは向かいで慌てる祐子ちゃんと見上げる室長に笑いながら言った。 「お前らはゆっくり食べろよ。これで公認だぜ」 「ああ、そうさせてもらう」 室長が祐子ちゃんに顔を向けると、祐子ちゃんの顔は真っ赤だったけど… とても嬉しそうだった。
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