【鶯の声】

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   伊達先生はもう一度深く溜め息をつくと、あたしに背を向け椅子に掛けてあった白衣をさっと羽織る。 「だけど、いけませんね、どうも」 「何が……?」 「僕に何かをもたらすのは、  飛鳥さんなので」  顔だけ振り返って、伊達先生は肩をすくめた。 「僕はそういうものに抗う術を、慣れ以外にまだ知りません」  ……蛇に睨まれたかえるって、こんな気分なのかな。  具体的にはよく判らない。  だけど、伊達先生の中にちらちらと妖しげな影が揺らめく。  ──それが自分のせいだって言われて、ちょっと怖いのに嬉しいとか、ヘンかな。 「慣れって……」 「知りたいですか?」 「……」 .
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