第2章

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   ──ああ、駄目な女だ。  自分のことを、そう評価する他なかった。  のろりと、時計を見上げた。  もう11時。  長江さんと部長になんて言い訳しよう……。  コポコポ……とお湯を注ぐ音が聴こえて、音のする方を見た。  白衣を脱いだ先生の背中。  身長高いし背筋も真っすぐ伸びてるし、こうして見てると研究者だなんて思えない。 「……あれ、本当だったんだ……」  掠れた声でそう漏らすと、先生は振り返る。 「何がですか?」 「芸術家とか、研究に携わる人について、本で読んだことがあるの」 「ん?」 「……良識とか、モラルが欠ける傾向にある」  つい、恨めしそうな声になってしまった。  先生はハハ、と楽しそうに笑う。 .
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