【彼女は逃走不能】

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   先生は、ちらっとあたしを見る。  今窺うくらいなら、ちょっと黙ってて欲しかった。 「そうだよ。黙っててごめん」  床でなくソファーに腰を下ろしながら、溜め息をつく。  ──嘘を、ついてたわけじゃない。  嘘をつきたかったわけでも、嘘にしたかったわけでもない。  自分で勝手に色々なことを気にして、自分で勝手に色々なことを隠していただけだ。  自信が、なくて。  芹香から、刺すような視線を感じる。  どうしよう、信用をなくしただろうか。  まさかあたしは、ここから出ていくような羽目に──なんて思考が飛躍しかけた。 .
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