【彼女は逃走不能】

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   その厄介さが、5年前の終わりだったとでも言うんだろうか。  女に──17歳だったあたしに、そんなもの理解できるはずがないのに。 「僕も、僕の言葉で正直に告白します。  確かにあの頃、僕には他に女がいました」 「……!」  彼らしからぬ生々しい言い草に、何故か身体の真ん中が震えた。  低く、悔恨を隠さない声で、そんな言い方。 「ですが、僕にとっての恋人は、あなただけでした」 「嘘吐き……!」 「……」  先生は息をついてコートを脱ぐと、持っていたカバンも足下にドサリと落とした。 .
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