【彼女は逃走不能】

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  「あなたにはすべて言い訳にしか聞こえないということは、判っています。ですが、僕は僕の真実を語っているつもりです」 「後からなら、なんとでも言えるじゃない!」 「……そうですね」  落とすようにつぶやいて、先生はそのままゆっくりとしゃがみ、膝をついた。 「……あなたが見たのは、確かに僕が付き合っていた女性です。彼女とは大学に入った当初からの付き合いで……」  先生はのろりとあたしを見上げる。  その瞳が潤んで揺れていて、胸を衝かれた。 「あなたと出会ったからと言って、  すぐに彼女を放り出すわけには  行かなかった」 「……!」 .
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