【彼女は逃走不能】

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   ──痛めつけられたのは、あたしだって同じなのに。 「飛鳥さん……飛鳥さん」  ふいに離れた口唇が、頬をかすめて耳に寄せられた。 「……あ、……んっ」  あたしが耳に弱いのを知ってか知らずか、先生は背中や腰、あらゆるところを抱いて撫で回しながら耳元でささやく。 「飛鳥さん……好きだ」 「……っ!」 「好きだ。  あなたが、好きなんだ。  ばかみたいに……好きだ……」 「あ、や……っ」  身体で、腕で、手で。  口唇で、声で、その吐息で──その奥の、心で。  使えるものすべてを駆使して、先生はあたしに追い縋る。 .
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