239人が本棚に入れています
本棚に追加
どうしてだろう。
そう、身体の自由を奪われつつあるのはこっちの方なのに、間違いなく縋られているのはあたしで、彼の方が縋っている。
カットソーのボタンを外され、首筋、鎖骨と先生の熱い口唇が這い回る。
床に押し倒されながら、目尻から涙がこぼれた。
女って、馬鹿みたいだ。
許せないとか、忘れたいとか、たくさんたくさんあったはずなのに。
先生の一挙一動で、そんなこと全部どうでもよくなってしまう。
彼が本当にあたしのことだけを好きだと言ってくれるのなら──抱えてきた痛みの何もかもを、反故にしても構わないだなんて。
やたら潔く思えてしまう。
.
最初のコメントを投稿しよう!