【彼女は逃走不能】

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   どうしてだろう。  そう、身体の自由を奪われつつあるのはこっちの方なのに、間違いなく縋られているのはあたしで、彼の方が縋っている。  カットソーのボタンを外され、首筋、鎖骨と先生の熱い口唇が這い回る。  床に押し倒されながら、目尻から涙がこぼれた。  女って、馬鹿みたいだ。  許せないとか、忘れたいとか、たくさんたくさんあったはずなのに。  先生の一挙一動で、そんなこと全部どうでもよくなってしまう。  彼が本当にあたしのことだけを好きだと言ってくれるのなら──抱えてきた痛みの何もかもを、反故にしても構わないだなんて。  やたら潔く思えてしまう。 .
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