【彼女は逃走不能】

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   まさかと思った瞬間、耳の中で今聴いたばかりの先生の声が繰り返される。 “ごめんなさい”の響きには、今のあたしと同じものが混ざってなかっただろうか。 「ごめんなさい、飛鳥さん……僕は、最低だ」 「え……」  先生は、そのままのそりと上半身を起こした。  手は、たった今自分で開いたばかりのあたしのカットソーを閉じている。  乱れた髪で、彼の表情が見えない。 「今、自分のしたことがもう一度思い返されて……17歳のきみに、なんて傷を与えてしまったんだろうと……」 「せんせ……」 .
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