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「先生、どうにかして。ひとりに、しないで」
縋りついていた先生の腕が、やんわりと動く。
彼のするまま、琥珀の瞳を見上げた。
しなやかで、それでいてしっかりとした指が、こぼれる涙をそっとなぞっていく。
「……それは、口説き文句ですか」
「……」
往生際が悪いことは判っていたけど、「判んない」とかすれた声でつぶやいた。
「飛鳥さんは、昔から悪い子です……」
諦めたような声でそうつぶやくと、先生は赤い目をしてふっと微笑む。
「昔から、そうやって僕を動かす。
意識しているのかいないのか……
仕草で、目で、声で……」
両方の頬を両手で包まれて、動けない。
こぼれる涙に、先生は口唇を寄せてきた。
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