【彼女は逃走不能】

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   見えない力で、心の一番深い場所をぎゅっと掴まれるみたいに。 「……せんせい、も……、だめ……っ」  しなり、どこまでもよじれていきそうな身体を、先生が押さえつけてくる。  強く抱きしめられて、彼の心の声が聴こえてきた気がした。  とてもあたたかくて、痛くて。  その時、ようやく気付いた。  彼をひとりにしてしまったのは、あたしの方だったのかも知れない、って。 .
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