【彼女は逃走不能】

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   喉に甘くてピリピリした清涼感が駆け抜けていくその余韻に浸りながら、缶を見て溜め息が出た。  缶にはしっかり“SERIKA”とマジックで殴り書いてあったからだ。  冷蔵庫にものを置きっぱなしにする時は、一応名前を書いておくのがあたし達のルールだった。  理由は簡単で、たかがドリンク1本、お菓子ひとつで喧嘩なんてしたくないから。  その代わり、誰がいつ食べても構わないものは無記名。  芹香はあたしほど毎晩のように晩酌はしない。  だから、名前の入ったお酒が入っていたということは、それなりに理由があって買ってきたものなんだと思うんだ──けど。 .
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