【彼女は逃走不能】

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  「なっ、なんっ、な、なんっ!?」  わずかに残っていた平常心は一瞬で吹き飛んでしまい、まともな言葉が出てこない。  そうして口をパクパクさせるだけのあたしを見ながら、先生はコートのポケットからスルッと携帯を出して見せてくる。 「……! ああぁ……っ!!」  しまった。  携帯を受け取りに行ったのに、またそのまま逃げ帰ってきたんだ。あたしは。  缶をテーブルに置き、ヘナヘナとその場に崩れ落ちると、芹香が何の含みもない声で明るく言う。 「びっくりしたよー。今日は菜月が帰ってこないって言うからさ、飛鳥と外でご飯でも食べようかなって電話したら、伊達先生なんだもん」 「あああああ……」 .
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