【Side 伊達:その名は毒殺】

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   前田さんが泣くのを我慢しているのだとひと目で判ったのは、どうやら俺だけらしい。  彼女と対立するように立っていた4人の女子高生達の方が、あからさまにべそをかいていたからだ。 「……えっと、何かありましたか?」  奥に教頭の姿は見つけたが、そのまま会釈だけして「じゃあ」と出ていけるような空気ではない。  何より、孤立している様子の前田さんの姿が気になった。 「いえ、ちょっとした小競り合いですよ」  顔なじみになった、同世代の女性教師が呆れたように肩をすくめる。 「そんなんじゃない」  きっぱりと強い口調で言い切ったのは、前田さんだった。 .
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