262人が本棚に入れています
本棚に追加
前田さんが泣くのを我慢しているのだとひと目で判ったのは、どうやら俺だけらしい。
彼女と対立するように立っていた4人の女子高生達の方が、あからさまにべそをかいていたからだ。
「……えっと、何かありましたか?」
奥に教頭の姿は見つけたが、そのまま会釈だけして「じゃあ」と出ていけるような空気ではない。
何より、孤立している様子の前田さんの姿が気になった。
「いえ、ちょっとした小競り合いですよ」
顔なじみになった、同世代の女性教師が呆れたように肩をすくめる。
「そんなんじゃない」
きっぱりと強い口調で言い切ったのは、前田さんだった。
.
最初のコメントを投稿しよう!