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『でね、その時課長がさー』
ハンズフリーの携帯から響く声を、右から左へと聞き流す。
ずいぶん長い間、この甲高い声を聴いている気がする。
大学に入った年から付き合っている彼女は、とにかく神経質だ。
無神経よりずっといいと思っていたが、最近どうにも風向きがおかしい。
とにかく、愚痴が多い。
大学院に進んだ俺とは違い、卒業と共に一般商社に就職した彼女は、バリバリ働いている。
世間的には社会人の女と学生の男の組み合わせは長続きしないと言われているが、俺には女性に対するその手の劣等感はなかった。
『……って言うんだよ。ありえなくない?』
「そうだね」
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