【Side 伊達:その名は毒殺】

20/37
前へ
/37ページ
次へ
   いかにも正しいことをした、という顔をされて、ますます違和感が広がる。  彼女の言いたいことも理屈も、充分に理解はできるのに。何故。 「だけど、危ないよ。怪我でもしたらどうするんだ」 「そこは、判ってやってるから。わざとぶつかるにしても加減できるもの。いたっ! って声上げたら、びっくりしてたよ」  必死に、考えた。  自分ならどうするかと。  だが、どう考えても、ぶんぶんと前後に振り回される傘を手で受け止め、「これ、危ないですよ」と声をかける自分しか想像できなかった。  俺にできるお節介なんて、それくらいだ。  わざとぶつかって一瞬被害者を装うなんて、形を変えた悪意ではないんだろうか……。 .
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

262人が本棚に入れています
本棚に追加