【Side 伊達:その名は毒殺】

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   うん、と前田さんはその時初めて笑った。  ふふ……と小さく漏らされた少女の声がひどく甘やかで、胸の奥が苦しくなる。  ここが学校でなければ。  俺が教職でなければ。  彼女が制服でなければ。  自然とその肩に触れて、抱き寄せてしまっていたかも知れない。  こんな強い衝動は初めてで、自分の身体が前後にゆらゆらと揺れるような浮遊感を味わう。  好きだとか、愛してるだとか。  そんな意味は、忘れてしまった。  ただ、幼気で真摯なこの前田飛鳥というひとりの女の子に、たまらなく胸が疼く。 .
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