262人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
うん、と前田さんはその時初めて笑った。
ふふ……と小さく漏らされた少女の声がひどく甘やかで、胸の奥が苦しくなる。
ここが学校でなければ。
俺が教職でなければ。
彼女が制服でなければ。
自然とその肩に触れて、抱き寄せてしまっていたかも知れない。
こんな強い衝動は初めてで、自分の身体が前後にゆらゆらと揺れるような浮遊感を味わう。
好きだとか、愛してるだとか。
そんな意味は、忘れてしまった。
ただ、幼気で真摯なこの前田飛鳥というひとりの女の子に、たまらなく胸が疼く。
.
最初のコメントを投稿しよう!