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きっと、彼女みたいな女の子はどこにでもいるんだとは思う。
だが、これまで俺はそういう女の子に出会ってこなかった。
俺の周囲にいたのは、どちらかというと前田さんを責めようとしていたあの4人の女の子の方。
それが何故かと思いを巡らせた時、ビクッと身体の方が先に反応してしまった。
「……え?」
いつの間にか俺の顔をまっすぐ見上げていた前田さんが、こわごわ袖を引っ張っている。
「ねえ、先生」
「……何ですか?」
心の内を悟られてはいけないと、つい声が低くなる。
が、前田さんはそんなことにはお構いなしに続けた。
「芹香のこと、ありがとう。言わないでいてくれて」
ツキ……と胸の奥が痛む。
俺が吐いた嘘のことは、前田さんに知られるわけには行かない。
あの場にいなかった毛利さんなど、初めから問題じゃない。
俺が守りたかったのは──。
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