【Side 伊達:その名は毒殺】

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   だが、最近俺が疑問に感じているのは、彼女が「今日は樹にも聞いてもらわなくちゃ」と気合いを入れて語り出すのが、何故いつも見知らぬ他人の悪口なのだということだ。  同期の誰それがどうとかその後どうだとか、顔と名前がちゃんと一致する共通の意識があれば、乗ってもやれるのだが。  見知らぬ他人の話を、彼女の主観のみで補完しろと言われても。  ──付き合っているからと言って、こういう時間は強制されるものではないと思う。 『失礼しちゃうよね。人のこと使い走りみたいに思ってんだよ』 「うん」  煙草を咥えながら、インスタントコーヒーに湯を注ぐ。  それなりに漂うコーヒーらしい香りに、ほうと息をつく。 .
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