【Side 伊達:その名は毒殺】

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  「おはようございます」  空気を読み、ささやき声でそっと職員室に顔を出した。  静かに開けたつもりだが、重い引き戸のガラガラという音はどうしても消せなかったらしい。  職員室中の人間が、一斉に俺を見た。  そこにあった緊張感も一度に刺された気がして、思わず眉根を寄せる。  と、その中に5人ほどの女子高生の姿があった。  騒いでいたのはこの娘達か──と思った瞬間、彼女の姿を見つける。  ──前田飛鳥。  彼女はぎゅうっと口唇を噛みしめて、眉間に皺を寄せながら俺を見ていた。  目が合った瞬間その瞳がうるん、と涙で揺れる。 .
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