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僅かな休息。
戦いが終わったわけではない。
呼吸を整え、一刻も早く戦線に復帰しなければ。
圏術も展開していた俺にはわかっていた。
猿の魔物の活動が、先ほどよりも活発化していることを。
仲間意識があったとは思えないが、この変化はおそらく、俺やラナーシャ、他の放術使い達の膨大に膨れ上がった天力に反応したのだろう。
逸る気持ちが抑えられないな。
治らない眩暈に頭を押さえながら、なんとか立ち上がる。
「まだ休んでなさい。無茶をしては駄目よ」
背後から声をかけてきたのは、馬から降りてきたミゼアさんだった。
彼女もあの一瞬でかなりの力を消耗したのだろう。
疲れ切った表情で、額には汗が光る。
「もう一体の方も気になるのでしょうけど、今のところなんとか上手く立ち回って足留めできてるみたいだし」
ふう、とひとつ大きく息を吐いた後、未だ続くもう一方の戦場を横目にしつつ、慣れた手付きで弓の手入れを始めた。
「お兄さんがかなりの実力を持っているってのはわかったわ。この戦況に大きく関わってくるほどにね」
「……あなたも、凄かったじゃないですか。あの槍を、弓で?」
もしかしたら、あの瞬間に俺が天術を同時に使用したのを勘付かれたかもしれない。
話題を逸らすと同時に、素直に俺が凄いと思った彼女の技について尋ねてみた。
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