実戦あるのみ

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目の前の大きな首長鰐は思った以上に手強かった。 というより厄介だ。 横に回ったり背後を取ろうとしても長い首の稼動域が予想以上に広く、なかなか隙を突けないでいる。 幸い動き自体はそんなに早くなく、今のところなんとか対処できている。 首長鰐は次の攻撃を悟らせないようにか、首と頭をゆらゆらと揺らして俺を狙っている。 野生動物の動きは読み辛い上に、初めて見る相手だから特徴や特性、性質といった情報も皆無。 もちろん弱点なんて知るはずもない。 それでも抵抗しなければきっとあの大きな顎で丸呑みにされてしまうだろう。 鹿くらいなら一飲みできそうだ。 想像するだけでも寒気がする。 最初、俺の剣がどこまで通用するのか試したいという思いもあって剣一本で挑んでみたけど……。 やはり俺の腕ではまだまだ歯が立たないようだ。 「まだ修行が足りないか……。仕方ない」 俺が今使える力の中で一番汎用性のあるもの。 錬術に頼る。 首長鰐から目を離すことなく練成したロープを伸ばし、岩場に置いてある服を手に引き寄せる。 たしか、蛇は熱を感じ取る器官を持っていたはず。 これがどこまで通用するかわからないし、もし蛇と同じ性質を持っていればあまり意味を成さないかもしれない。 今は、やれることをがむしゃらにやるだけだ。 俺は未だ濡れている服を首長鰐の顔面に投げ、目隠し状態にする。 視界を奪われた首長鰐は怯んだようで、顔面に纏わり付く服を振りほどこうと首を左右に振り、何歩か後退る。 その隙を突き、俺は即座に背後に回る。 そして未だ暴れる首長鰐の背中に、思い切り剣を叩きつけた。 「くそ……!硬ぇ!」 手加減したつもりはない。 持てる限りの力で背中に斬りかかったのだが、ゴツゴツとした分厚い皮に僅かな傷を付けることはできたものの、大したダメージを与えられたとは言えない。 数度、剣を振り下ろしたところで視界を取り戻した首長鰐の牙が襲ってきた。 なんとかそれを避け、俺がいた空間にガチンガチンと牙が噛み合わされる。 せめて一撃を、と思い、迫り来る顔面に振るった剣は避けられたけど、それを機に一旦距離を取って離れた。 「ずりぃ……俺なんて全身急所みたいなものなのに!」 もちろん俺は鎧どころか服すら身に纏っていないわけで。 全ての急所を曝け出している状態。 つまり、全裸。
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