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最初のロープはあからさまに伸ばして囮にする。
そしてもう一本のロープで攻撃の要である頭部を封じる。
持ち上がっていた長い首を引っ張ることで首長鰐は足を踏ん張って引かれまいと地面を踏む。
俺のロープで長い首との綱引き状態。
少し知恵のある者であれば無理に耐えようとせず、逆に距離を詰めてくるだろう。
こいつが本能だけで行動してる野生動物でよかった。
相手もかなりの力だけど、俺もミスティが馬鹿と評するほどの力を持ってそれに対抗する。
そしてここで、最初に伸ばしたロープを再び操る。
枝を通したロープで首長鰐の前脚の脇下をくぐらせ、それで上半身を引き上げ、首のロープを若干緩める。
前脚が地面から離れるが、さすがに全身を宙に浮かせられるまでには至らずに後ろ脚で地面を踏んで足掻いている。
首に巻きつけたロープで相手の最大の攻撃であろう牙を封じたまま、胴体を宙吊りにさせたロープを枝に縛り付け、一旦そのロープから手を離す。
これで宙吊り状態を保ったままとなるけど、吊るしているロープに俺の意思は伝えられない。
自由に操れるのは左手で頭部を封じているロープのみ。
だけど、これで動きと攻撃を封じることができ、腹部も露になった。
絶好の好機。
右手で剣を構え、全身をぶつけるつもりで心臓目掛けて突進した。
「っ危ねっ!!」
俺の剣先が届くより早く、がむしゃらに振り回された太い尾が横から襲い来る。
咄嗟に剣で受け止めることができたけど、体勢を崩されてしまった。
筋肉の塊から繰り出された幅の広い鞭のような尾。
まともに生身で受けていたら腕が折れていたかもしれない。
迂闊だった。
攻撃手段は何も牙だけではなかった。
それを証明するかのように、首長鰐は吊るされながらも更なる攻撃を重ねてきた。
辛うじて地面に着く後ろ脚だけで立つ首長鰐の周囲に水がうっすらと集まってくる。
そして地面からゆらゆらと陽炎のように立ち昇り、まるで命を持って身を護るかのように揺らめいている。
「なんだ、あれ……?」
再度距離を取ろうとした俺に向け、一握りの水の塊が飛んでくる。
それを目にした俺は地面に伏せるようにしてなんとか避ける。
水を操った……?
つまり、放術!?
「こいつ、妖獣か……!」
簡単には近づけないか……?
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