二人目

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地面に手を着き、何やら集中しているガラルを俺とミスティが静かに見守っている。 「……さすがにちと距離があるな。さて、上手くいってくれるかね……」 小声で呟いた後、さらに集中して力を込めているようだ。 これはおそらく……放術を使おうとしているのか? 地面に手を当てているということは、地の属性を持っているのだろうか。 どんな方法で仕留めるつもりなのか、と俺はその成り行きを見守る。 ミスティもガラルの邪魔にならないよう、その様子を静かに見ていた。 そして、俺の未熟な感覚でもわかるほど、ガラルから天力の流れを僅かに感じ取ることができた。 それを察知したのか、トーグルは擬態を解いて首を持ち上げ、警戒を強めて周囲を見回している。 身の危険と判断したのか、そいつは砂に潜って逃げようとした、その瞬間。 トーグルの周囲を囲むかのように地面から何本もの柱が伸び、そればかりか足元も僅かに持ち上がった。 ただ、おそらくガラルの力が作り出したであろうその柱は、俺の予想に反して土や砂でできた物ではなく、陽の光を反射して輝く透明な水晶のように美しかった。 「……なんだ、あれ!?トーグルを取り囲んで捕えた!」 柱に取り囲まれ、足元にも逃げ場を失ったトーグルは水晶の檻の中で暴れ回るが、がっちりと口を閉ざした檻からは抜け出すことができないでいる。 「へぇ……珍しい属性持ってるのね。口だけじゃなかったんだ」 感心しながらもそこはかとなくやや毒舌なミスティ。 水晶を操る属性……なのか? これはどんな属性になるんだろう。 やがてトーグルを取り囲んでいた水晶は互いが絡み合い、最後にはひとつの大きな水晶となった。 その中にはすでに息絶えたのか、身動きひとつせずに眠っているかのようなトーグルが閉じ込められていた。 「ふう……。どうだい?なかなかやるもんだろう」 立ち上がってひとつ深呼吸し、得意気な笑みを浮かべて振り返るガラル。 「すごい……。素直に感心した」 率直に素直な感想。 初めてみる放術に、それを操る属性。 そしてその美しさに度肝を抜かれた気分だ。
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