5人が本棚に入れています
本棚に追加
俺『山崎シンヤ』は会社の経理を一人で任されていた。
当時、俺が働いている会社はそれほど大きな会社ではなく、社員が百名程の保険会社の下請けだった。
その中で俺は、真面目に働いていた。
だから、会社での評判も良い方だった。
だが、過ぎていくのは平凡な毎日だけ。
横領を始めた切っ掛けは、些細な事だった。
2つ歳上の、ギャンブルと女が大好きな、会田先輩が持ってきた領収書。
「シンヤ、お前にも分け前やるから、これどうにかして落としてくれないか?」
金額にして、十万円。
「どうしても、今日中にヤミ金に払わないと桁が一個増えるんだよ~っ!」
頼む、と言われ仕方なくやった。
ありがとう、と言われどことなく嬉しかったのを覚えている。
そして、平凡で退屈だった日常が、快楽に変わっていく事に嵌まった。
結果、俺は金ではなく、スリルを求め横領を繰り返した。
だが、そのスリルにも馴れてしまうと、感覚がズレ始めた。
横領にすら、飽き始めていた。
お金ばかりが貯まっていく裏通帳。
「もう、潮時かな・・・・」
それをみていると、いつからそこにいたのか、後ろからあの先輩の声がした。
「シンヤ、飲みに行こうぜ!」
「・・・・・・はい。」
俺は動揺しながら、裏通帳を鞄に入れた。
最初のコメントを投稿しよう!