5月上旬/運命のスレチガイ

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「……また、会えるんだ」 目を瞑ればリフレインする。 凛と響く低い声、清涼な香水の香り。 記憶に焼き付けられた、私の知らない男の人。 萌の言う通り、これはある意味チャンスなのかもしれない。 もう恋をすることは叶わなくても、これを機に女を取り戻すことはできる。 それで何かが変わるわけでもないけれど、とにかく、今のままではダメな気がするから。 「火曜エステ予約しとこ」 こんな思いはいつぶりだろうか。 会うことが楽しみだと思える人が、できたこと。 「ごめんね、タカちゃん」 けれどこれは、浮気ではない。 私は片柳さんとどうにかなりたいわけではない。 ただちょっとだけ、日常に波を起こしてもらうだけ。 「っしゃー! ワクワクしてきたっ!」 日常にほんの少し、非日常を混ぜるだけ。 そう、思っていた。
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