5月上旬/運命のスレチガイ

5/27
前へ
/27ページ
次へ
記憶を呼び起こしながら、名前と顔をリンクさせる。 すれ違ったあの瞬間、あの姿。 幻かと思った。 ストップモーションの世界に思えた。 「確かにイケメンだったけどさ、エンがそこまで騒ぐの珍しいね」 「だって、ドンピシャ過ぎて! てか今帰っちゃったってこと!?」 「うん。でも――」 「追ってくる!」 「はっ!?」 夢中でオフィスを飛び出した。 私を引き止める声なんて、これっぽっちも届いていなかった。 通路の先に見えたエレベーターの表示が1であることを確認して、迷わず階段を選ぶ。 ここは4階。走ったほうが早いと判断したのは、もはや本能にも近しい域。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6073人が本棚に入れています
本棚に追加