5月上旬/運命のスレチガイ

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「はい」 チャコールグレーの背中がピタリと止まると、再び始まるストップモーション。 端正な顔に良く似合う、凛と響く低い声。 射抜かれた心臓は、きゅうっと小さく縮こまる。 「あっ、あの……!」 全速力で走ったせいで、息が上がって苦しい。 けれどその場から動けない理由は、それだけではなかった。 「どうかされましたか」 スラッと長い脚は、あっという間に私の目の前までやってきて、 「あぁ、さっきすれ違った方ですね」 と、緩やかな笑みを落とす。 「――ッ!」 心臓が止まりかけたのは、走って乱れた動悸のせいではない。 これが俗に云う『きゅん』てヤツだ。
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